昔々、平和を求めた王がいた
王は神に願った
「この世に救いを、民に平穏を」
神は王の真摯な祈りに応え、美しき箱を王に贈った
「この世の災厄全てをこの箱に閉じ込めた」
「決して開けてはならず」
「開ければその時、全ての災厄が世界に混沌を齎すだろう」
王は神に感謝し末永く箱を見守ることを誓った
あぁ、しかし、しかし
時間とは過ぎ去るものだ
国は緩やかに途絶え、伝承も失われた
忘れられた美しき箱は朽ちる事を知らず
美しさに惹かれた人間は箱を開けてしまった
そして世界に災厄がばら撒かれた
神は憂いた
それは取り返しのつかない事だった
神は贄を求めた
「月と日が重なりし時、世界が闇で覆われる時、光を灯せ」
「命の火を捧げよ」
「植われた塔が道標」
争い、病、飢餓、天災
それらを抑える対価を、人柱を
捧げよ、捧げよ、捧げよ
これは繰り返される悲劇
これはエンドロールを迎えた物語
『大好きな人たちがいた
うんと小さい時に拾って育ててくれた優しい人たちがいた』
彼は今日も繰り返す
同じ道
同じ景色
同じ匂い
その身は痩せていて、歩くのもおぼつかない
歩き終わった先には一つの慰霊碑
彼はそこに体を横たえ丸まった
ただじっと、ずーっと、ずーっと
彼は今日も繰り返す
晴れの日も、雨の日も、曇りの日も、雷の日も、雪の日も
まるで離れないように
まるで置いていかれないように
まるで共に眠るように
『大好きな人たちがいた
一緒に遊んで一緒に食べて、一緒にお昼寝してくれた人たちがいた』
彼は今日も繰り返す
違う夢
違うご飯
違う温度
その身はもう、動くのすら儘ならない
それでも歩く先には一つの慰霊碑
彼はそこに体を横たえ丸まった
上に雪が、ぽつり、ぽつり
それでも明日はやってくる
晴れの日も、雨の日も、曇りの日も、雷の日も、雪の日も
そして離れないように
そして置いていかれないように
そして共に眠るように
『大好きな人たちがいた
あいたいな、あいたいな
また名前を呼んで』
『おいで、 』