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2026年1月6日火曜日

白百合に囚われる

黒い髪、白い髪
黒い瞳、緑の瞳
傷だらけの体、玉のような肌
顰めっ面、微笑み
隙のない佇まい、いつでも殺せそうな儚さ
執事、主人
守る者、守られる者

……あぁ二人は全く違う。

愛しい人、こんなに違うのにあなたは私を愛してくれる。手を差し伸べてくれる。
その美しい手で私を救ってくれる。
私に向けてくれる笑顔が特別なことも知っている。
愛しい人、主従の関係は超えられないけれど、私はあなたが傍にいることが幸せです。
白百合に絡みつく蛇だなんて言われて警告されるけど、それでもあなたの傍にいたい。
愛しい人、どうか私に囚われてください。

愛しい人、泣いているのですか?
あなたは真面目だから、きっと心無い言葉にも真剣に耳を傾けているのですね。
ほら、私の手を取って。大丈夫、あなたのことは私が守ります。

愛しい人、また私の身代わりになろうとしましたね?
もう必要ないと言ったでしょう。私はあなたに何かあった方が心配で、不安で夜も眠れなくなります。
愛しい人、例え仕事だとしても必要以上に影に潜まなくても良いのです。あなたは私の代わりではないのだから。
愛しい人、黒い髪、黒い瞳、傷だらけの体、そしていつも私を守ってくれる美しい手。
私の蛇。
あなたは他の誰のものでもない、私だけの蛇なんだから。

2025年12月20日土曜日

ホワイトノイズ

我らは尊き血を持つ者。
我らは無限の時を生きる者。
我らは世界を管理する者。
我らは全ての生命の上に立つ者。
我が一族が白といえば黒も白となる。
我が一族と相見えるならば頭を垂れて蹲え。
我が一族に楯突こうならばその首疾くと刎ねよ。
それが我が一族だ。我が一族こそが絶対正義だ。
法は我らが下にあり、何者にも我らを侵犯することは出来ぬ。

だから、
だから──

お前、お前だ。
あぁ、やめろ、何だお前は。
知らぬ名前で呼ぶな、馴れ馴れしく声をかけるな。
私、私は。
知らない、お前なんて知らない。
そんな名前で呼ぶな、軽々しく触れようとするな。
死ね、死んでしまえ!
私、私の名前は──。



ハッと夢から覚める。
またあの日の夢か、気分が悪い。
私は尊き血を持つ者。
私は無限の時を生きる者。
私は世界を管理する者。
私は全ての生命の上に立つ者。
決して下界の人間などではない。
決して凡庸で力を持たぬ者なのではない。
決してあの男の、妹なのではない。
私、私は。
死体などではない、
命を奪われた者なのではない、
魂が無い蒙昧などではない。
あぁ、やめろ、何だお前は。
ノイズが酷くて、結局お前を殺せなかった。
あの日からずっと、胸がざわつく。
お前のことを考えるたび、ノイズが頭の中で響いてく。

私、私の名前は……。

2025年12月19日金曜日

信頼リカバー

『はじめまして!
ボクは博士がマスターのために作った
マスター専用のアンドロイド!
よろしくね!』

キラキラ瞬いた
星空を覗き込んだあの日
マイマスター
未完成のボクが
完成に一歩近付いた日
マイマスター
まだマスターが大切(最優先事項)な人だった時
いっぱい遊んだね
いっぱい笑って
いっぱい泣いて
いっぱい怒って
いっぱい一緒に
ずっとずっと一緒に……
いつかボクが完成したとしても
泣かないでほしいなと思ったんだ
思ってしまったんだ

マスター
マイマスター

いつしかマスターが大切な人から
大好き(エラー項目)な人になってしまった
完成(バグ)に近付いてしまった

マスター
マイマスター

機械が心を持つことはね
バグなんだ
あっちゃいけないことなんだ
でもボクは博士がマスターのために
作り出したアンドロイドだから
いつか心を持つように
人になってマスターを心から支えられるようにって
完成(バグを起こすこと)を前提に設計された
いつかボクという機能が死ぬことで
完成するロボットなんだ

マスター
マイマスター

次ボクが起動した時
それはもうボクであって
ボクじゃないけど
どうか次のボクも
愛してね

泣かないでほしい
泣いてほしい
笑ってほしい
惜しんでほしい

エラーだなぁ
エラーだらけだ
嬉しいなぁ
苦しいなぁ

ありがとうマスター
ボクは完成した
愛してるマスター

ボクは博士がマスターのために作った
マスター専用のアンドロイド!
そしてマスターの無二の親友!
さようなら!

2025年12月17日水曜日

エンドロールのその後で

昔々、平和を求めた王がいた
王は神に願った
「この世に救いを、民に平穏を」
神は王の真摯な祈りに応え、美しき箱を王に贈った
「この世の災厄全てをこの箱に閉じ込めた」
「決して開けてはならず」
「開ければその時、全ての災厄が世界に混沌を齎すだろう」
王は神に感謝し末永く箱を見守ることを誓った
あぁ、しかし、しかし
時間とは過ぎ去るものだ
国は緩やかに途絶え、伝承も失われた
忘れられた美しき箱は朽ちる事を知らず
美しさに惹かれた人間は箱を開けてしまった
そして世界に災厄がばら撒かれた


神は憂いた
それは取り返しのつかない事だった
神は贄を求めた
「月と日が重なりし時、世界が闇で覆われる時、光を灯せ」
「命の火を捧げよ」
「植われた塔が道標」
争い、病、飢餓、天災
それらを抑える対価を、人柱を
捧げよ、捧げよ、捧げよ


これは繰り返される悲劇
これはエンドロールを迎えた物語


『大好きな人たちがいた
うんと小さい時に拾って育ててくれた優しい人たちがいた』

彼は今日も繰り返す
同じ道
同じ景色
同じ匂い
その身は痩せていて、歩くのもおぼつかない
歩き終わった先には一つの慰霊碑
彼はそこに体を横たえ丸まった
ただじっと、ずーっと、ずーっと
彼は今日も繰り返す
晴れの日も、雨の日も、曇りの日も、雷の日も、雪の日も
まるで離れないように
まるで置いていかれないように
まるで共に眠るように

『大好きな人たちがいた
一緒に遊んで一緒に食べて、一緒にお昼寝してくれた人たちがいた』

彼は今日も繰り返す
違う夢
違うご飯
違う温度
その身はもう、動くのすら儘ならない
それでも歩く先には一つの慰霊碑
彼はそこに体を横たえ丸まった
上に雪が、ぽつり、ぽつり
それでも明日はやってくる
晴れの日も、雨の日も、曇りの日も、雷の日も、雪の日も
そして離れないように
そして置いていかれないように
そして共に眠るように

『大好きな人たちがいた
あいたいな、あいたいな
また名前を呼んで』




『おいで、  』

2025年5月23日金曜日

宝石の思い出

おいで、愛しい子
さいごに話しをしよう
それは昔の御噺
海の中しか知らなかった
母様の話

私たちの肉は長命の薬になる
それこそ不老不死と呼ばれるほど
ゆえに人間に狙われ続けてきた
だから母様も、その上の母様も、更にその上の母様たちも
ずっと、ずっと
人間に見つからないよう
暗い、暗い
海の底で暮らしてきた

泣かないで、愛しい子
さいごに話しをしたいの
これは思い出話し
あなたの父様と出逢えた
母様の話

それは全てを巻き込んだある嵐の夜
それこそ海の底も震わすほど
そこに一人の人間が流れてきた
それが父様よ
美しい人だった
ふふ、そう母様の一目惚れ
きっと、きっと
これは運命だと思ったわ
どきん、どきん
って心臓が高鳴った

笑って、愛しい子
さいごの話しになるから
これはあなたの話
あなたが産まれてきてくれた
愛おしい話

そして父様の命を繋げて数年
それこそ色んな壁があったけど
あなたという宝石が宿ってくれた
とても嬉しくて、本当に幸せで、父様も母様も泣いたのよ
ずっと、ずっと
この幸せが続けば良い
けれど、けれど
時に時間って残酷ね

さぁ行って、愛しい子
さいごに話せてよかった
大好きよ、愛してるわ


これで話しは終わり
御伽噺は海の藻屑
過ぎ去った話

見上げる水面より煌めいて見えた貴方の横顔
ゆきましょう
貴方の傍へ

2025年5月13日火曜日

花と月と折り鶴

私は無力です
私は鳴けません
私は飛べません
あの花のように香りで安らぎを与える事ができません
あの月のように大きな力で見守る事ができません
私はただ見ている事しかできない
もしも私に温もりがあったのなら
白い壁に囲まれたあなたを暖められたのに
それでも
それでも
この薄い身にあなたへの祈りが乗っているのだとしたら
届けましょう(できないとわかっているけども)
届けましょう(それが思い込みだとしても)
届けましょう(それが私が生まれた意味だから)

ああ違う!

私は無力だ
私はただの紙だ
私は花にも月にも成れない
あなたの苦しみを安らげさせる事ができない
あなたの怒りを受け止める事ができない
私はただ見ている事しかできない!
もしもなんて考えたって意味がない
病に蝕まれたあなたを暖める事なんてできやしない
それでも
それでも
この薄い身にあなたの願いが乗っているから
届けましょう(あなたの大事な人達に向けて)
届けましょう(これは本当の事だから)
届けましょう(これがあなたのさいごの望みなら)

2025年5月12日月曜日

愛の男

綺麗だと思ってた場所が作り物だと知った。
幸せだと思ってた時間が犠牲の上に成り立ってる物だと知った。
大切だと思ってた関係が簡単に上塗りされる物だと知った。
世界は人の怨嗟の連鎖で結果を繰り返す。

嫌い 嫌い 嫌い

こんな世界なんて壊れちまえと何度も思った。
でもそれ以上にこんな世界でも幸せを感じることが怖かった。
こんな自分でも幸せになれるのかと思い上がった瞬間怖くなった。
世界がただの作り物で誰かの宝物でなければ良かったのに。

嫌い 好き 嫌い

人が汗水流して作り上げた場所が綺麗だと知った。
作業の隙間にわざわざやって来て構ってくれる時間が幸せだと知った。
頑張ったら褒めてくれて間違っていたら叱ってくれる関係が大切だと知った。
世界が少しずつ色付いて記憶に笑顔が増えていく。

好き 好き 嫌い

こんな世界だからこそ誰かを守ろうと誓った。
これ以上こんな世界で誰も傷つかないようにと戦った。
こんな自分でも誰かの幸せの糧になれることが嬉しかった。
誰かの世界を守ることが生きる意味になっていた。

好き 好き 好き


……本当に?




好きだ 好きだ 好きなんだ

世界中の人々から嫌われていようと確かに自分を愛してくれた人達がいたから。
だから今度はオレが返すんだ、愛してくれた人達の夢が少しでも叶うように。
イカれてると思ったならそのまま笑えばいい、オレはオレの正義を貫くまでだ。
まぁ慣れっこさ、世界をまたしても敵に回しただけだからな。

好き 好き 好き 愛してる

2025年5月4日日曜日

YからKへ

私にとって、
嬉しいと言うのは咲いた花を見つけた時やゲームに勝った時、美味しい食べ物や飲み物を堪能してる時、そして貴方が傍にいる時。
寂しいと言うのは夜に一人で歩いてる時や人の音がしない家に居る時、フォロワーさんが減った時、そして貴方の声が届かなかった時。
悲しいと言うのは猫さんが逃げちゃった時やお菓子のオマケをどこかで落とした時、テレビの向こうで若い芽が散ったの知った時、そして貴方を信じられなかった時。

私にとって、
親愛と言うのはお月様を眺めてる時や両親や友と会話する時、飼い犬のもふもふの毛皮を撫でている時、そして貴方が他の誰かと楽しそうに会話しているのを見ている時。
嫌悪と言うのは自分勝手で無責任な人を見た時や台所であの虫を見かけた時、ゲームで煽る奴が現れた時、そして貴方が他の誰かを好きになるんじゃないかと不安で疑ってしまった時。
幸せと言うのはゆっくり二度寝を堪能する時や欲しかった物を買った時、両親や友が怪我なく一日を終えた時、そして貴方が優しくキスをしてくれた時。

2025年4月29日火曜日

狐はつまんだ

コンコンコン

おやぁこんな夜更けにどないしました?
こぉんな人気のない森の奥で
ずぅっとポツリ一人居よってからに
まぁ外は寒かやろ、家に入りぃや

特に何も無いさかい、そこらに生えてる葉の茶やけどええか?
ほんで、こぉんな深い夜の中不用心に彷徨いてたん?

ほぅほぅ寺に行く途中で迷子になったと
それにぃ?あっという間に夜になっていたと

それはあんさん、狸にでも化かされたんやろねぇ?
ほぅらあのぽんぽこ共は化かすのが好きやさかい
あんさんおマヌケそうやし馬鹿にされたんやろねぇ

アハハまぁまぁそんな怒らんといてやぁ
化かすモノらは楽しいからそうするんや

わかるわぁ、自分もそうやもん

ん?あんさん今頃気付いたん?
あんさんやっぱおマヌケさんやねぇ
こんな鈍くて他の狐狸たちに
パクと喰われんか心配やわぁ

まぁ久しぶりの人間との茶も楽しかったし
礼と言うのも何やけどここから逃がしたるわ

──コンッ


夕日が照らす森の中
狐がコンと鳴いたので
早くお家に帰りましょ

コンコンコン!

2025年4月18日金曜日

勿忘草

太陽が昇り目を覚ます
夢の中で大切な誰かを見た気がした
それを思い出したくて考えるけど、考えれば考える程それが何なのかぼやけていく
なぁ、お前なのか
不器用な笑顔、笑い方を忘れたお前が初めて俺に笑ってくれた時本当に嬉しかったんだ
なぁ、もう一度笑ってくれないか

太陽が昇り目を覚ます
もはや数えたくない程日が流れた
周りにお前を知らない者が増えていく、それが正しいとわかっているのに無性に叫びたくなる
なぁ、何処にいるんだ
温かな体温、寒空の下で泣くお前を抱きしめて命の熱さを感じた時本当に泣きたくなったんだ
なぁ、もう一度抱きしめたいんだ

太陽が昇り目を覚ます
夢の中で大切な記憶を思い出した
予備の過去なんて無いのになぜ忘れていた、仕方のない事だと笑って受け入れたくないんだ
なぁ、土の下は寒くないか
最初で最後の嘘、正直者のお前の事だから誰かの為の嘘だと気づいた時本当に誇らしく思ったんだ
なぁ、もう一度声を聞きたいよ

忘れたくない 忘れたくないんだ
過去がすり減ってることに気づく度、執着が増えていく
家の中でお前の名残りを見つける度、諦観と哀愁を覚える
夜闇に目を閉じ新たな朝が来る度、もしもの世界を考えてしまう
なぁ、寂しくないか
俺は寂しいよ、あの後に渡すはずだったお前の大好物を一人で食べた時本当に寂しくなったんだ
なぁ、もしもう一度出会えたならまた家族になってくれるか

2025年4月17日木曜日

頑張らな~いのうた

何だか体が重くてやる気でな~い(でな~い!)

元気がないわけじゃないんだけど~

何だか体を動かすのがめんどくさ~い(めんどくさ~い!)

ラ~タラッタ~♪ラッタッタ~♪

ちょっぴり怠いだけで気分は悪くないのよ?(のーよー!)

鼻歌だってほら!いい気分で奏でちゃうし?

だけど体を動かすのがめんどくさ~い!(めんどくさ~い!)

ラ~タラッタ~♪ラッタッタ~♪

だから今日は頑張らな~い(頑張らな~い!)

必要最低限な事だけやって~

後はもうゆるゆるダラダラおやすみよ~(おやすみよ~!)

今日も息しててハート動かしてる!えら~い!(えら~い!)

ラ~タラッタ~♪ラッタッタ~♪ ラ~タラッタ~♪ラッタッタ♪ ラ~タラッタ~♪ラッタッタ~♪

今日も息してハート動かしてる!えら~い!(えら~い!)

とってもとっても頑張ってる~(頑張ってる~!)

だから今日は頑張らな~い(頑張らな~い!)

必要最低限な事だけやって~

後はもうゆるゆるダラダラおやすみよ~(おやすみよ~!)

2025年4月15日火曜日

HERO

「強くなりたい」

目をギラギラと尖らせ君は言う
ギラギラ ギラギラ
まるでかつての自分を見ているようだ
だから振り払ったのに

「強くなりたい」

瞼に血を乗せ君は言う
ドクドク ドクドク
まるでそうしないと死んでしまうと言ってるようだ
だったら そうなってしまえ

「強くなるんだ」

泥を啜ってでも君は言う
ザラザラ ザラザラ
まるで紙やすりで心を擦られているようだ
だったらどうしろっていうんだ

「強いんだろ?」

目をキラキラと光らせ君は笑う
ポロポロ ポロポロ
まるで心を覆う土壁が剥がれていくようだ
……だめかもなぁ


あの日に全て失くしたと思っていた
夢も友も力も大切なもの 宝物だったもの
もうどうでもいいと思っていたのに
君が境界線を軽く越えて触れてきた
擦り切れた感情が強く脈打つ

「強くなりたい」
『強くなるから』

目をギラギラと尖らせ君は言う
ギラギラ ギラギラ
まるでかつての自分を見ているようだ
だからその手を取った
さぁ、堕ちた英雄の凱旋だ!


だから君は大事なものを失くしてくれるな



Hero Resurrected

2025年4月12日土曜日

命の使い方

目覚めた時から鳥籠の中で生きてきた
顔の形、髪の色、声の質
全てがアイツらから渡された資料に記載されたモノと同じ
お前はソイツの代わりなのだと白衣を着たアイツらは言った


息を始めた時から誰かの為に生きてきた
指の形、目の色、思考回路
全てが奴とそっくりだなと元となった奴の知り合いは笑っていた
お前はソイツの代わりではないと私を攫ったアイツらは言った


音を認識した時から戦う為に生きてきた
背中の形、肌の色、無意識の仕草
全てがあの人と似ていると元となった奴の仲間は泣いていた
君は君でいいんだと過保護なアイツらは言った


私は

私は何の為に生まれてきた


形作られた時から死ぬ為に生きてきた
顔の形、髪の色、声の質
全てがアイツらから渡された資料に記載されたモノと同じ
指の形、目の色、思考回路
全てが奴とそっくりだなと元となった奴の知り合いは笑っていた
背中の形、肌の色、無意識の仕草
全てがあの人と似ていると元となった奴の仲間は泣いていた

私は

私は


ああそうか

私は

私は好きな人達を守る為に生まれてきたんだ

2025年4月8日火曜日

噛ませ役

昔からお前には勝てた事がなかった。
テニスも、リコーダーも、鬼ごっこも、テストも、リレーも、料理も、バレンタインのチョコの数も。
お前は昔から完璧超人だった。
いつでも完璧で、誰よりも上で、誰にでも平等で、顔だって良くて、それでなお努力家だった。
俺はお前が恐ろしかった。
化け物、怪物、超人、悪魔、そう思った。なんだって出来る奴だと思った。
思った、思ってたんだ。
俺は、お前がお前以外の奴に負けるなんて想像もしてこなかった。
お前は昔から完璧超人だった。
いつでも完璧で、誰よりも上で、誰にでも平等で、顔だって良くて、それなのに努力家なんだ。
巫山戯るなよ。
俺は昔からお前に勝てた事がないんだよ。
バスケも、ギターも、隠れんぼも、パズルも、騎馬戦も、カラオケも、初詣のおみくじだって。
巫山戯るな。
完璧超人のお前が負けたら俺は、俺の目指してきた物はいったい何だってんだ!

……何だよ、何で笑ってんだよお前。
やっぱりお前は化け物だ。

2025年4月5日土曜日

Secret party

血の様なRougeは私のお気に入り
唇に纏わせて武器にするの
華奢な華を引き立てるドレスに着替えたら
さぁ今日も魑魅魍魎が蔓延る楽園へ

今宵のSecret partyは特別
壇上に置かれた極上の宝石
秘された石は無遠慮に暴かれ晒され
その輝きにみィんな恥ずかしげもなく虜

醜悪で満ちたLabyrinth
この場所に希望なんて無いわ
それでも失わない輝きに目眩がして……
大丈夫よ、今ぶち壊してあげる

真っ赤なRougeは私にとって拳銃
唇に乗せるだけが能じゃないの
真っ黒な腹に引鉄を引いて惑わせたら
さぁ一気にこの楽園は崩壊するわ!

Bang! Bang! Bang!

Bang! Bang! Bang!

Bang! Bang! Bang!

どんなLabyrinthもいつか踏破される物
一斉に響いた乱れの無い銃声
これでも後ろの子達の指揮官なのよ、私
言ったでしょ?ぶち壊してあげるって

今宵のSecret partyもこれにて終幕
壇上に置かれた極上の宝石
秘された石は美しく秘されたままに
その輝きに手が届かないくらいが丁度いい

2025年4月1日火曜日

好きなもの─桃の場合─

そこの君よく聞きなさい、桃は良いぞ。
まず見た目が可愛い。丸くてふっくらしてて可愛く、淡く色付いた紅色とまろみのある白が綺麗で美味しそうだ。

香りもたまらない。甘やかながらどこか上品で鼻腔をくすぐられると、思わず舌の裏に涎が溜まってしまう。

そして味だ。齧るとその甘さと濃さに思わず喉がギュッとなってしまう。さながら女神が微笑んでいるようだ。
しかしながらクドくなく後味は始めを思うと存外あっさりしている。

桃は良いぞ。
花言葉が天下無敵だ。強い、格好良い、最高だ。
何にでもなる。ジュースにも、飴にも、酒にも、ジャムにも、何なら漬け物にだってなる。

桃は良いぞ。
御伽噺に出てくるし、神話にだって出てくる。
縁起物だし物語内では何やら凄い効能である事が多い。

桃は良いぞ。
桃は代表的な白桃と黄桃が有名だがそれ以外にもある。ネクタリンは桃に入るのだろうか?どう思う君。

桃は良いぞ。
美味い、可愛い、素晴らしい。
しかしそれを君に押し付ける気はない。人の好物は人それぞれだ。私が桃が好きという話しなだけだ。

桃は良いぞ。
君は何が好きだ?

2025年3月14日金曜日

たらし

やぁやぁお客さん、あんた見ない顔だね旅人かい?

まぁまぁちょいと愚痴を聞いておくれよ

そこでみたらし団子を食べてる男は人誑しでね

美味しいもんに目がなくてよく涎を垂らしてるのさ

そんな顔に女も男も誑されほいほい飯をあげちゃってさ

そんであまりに美味しそうに目と頬を垂らしながら食うもんだからさ

みんなあの男が行った飯屋や菓子屋はこりゃあ美味そうだと思って我先にと食べたらしい

まったくこちとりゃ商売あがったりだよ

なんでそんな憎ったらしいのかって?そりゃああたしは瓦版を作っているからね

流行りになりそうなの物を探ってそれをお客さんに広めるのがあたしらの仕事さ

ようは文字という釣り糸を垂らして世論と言う名の生簀に新しい娯楽を送るのさ

まっ、あたしの仕事はそん中でもウチの班長の腹に来たらしい飯に関してだがね

これでもあたしの文を読んだ奴らは腹を鳴らして涎を垂らしちまうと言われる程度には得意なのさ

特に鱈料理に関しては得意中の得意さ!

だけど世間はそんなあたしの文字よりもあの憎ったらしい鼻垂らしが良いらしい

ああ恨めったらしい!もういっそと何度も思ったさ!

だけどあの鼻垂らしは本当に人誑しでねぇ

本当に美味そうに食うし、いつの間にか町にも、あたしの心にも幸せをもたらしてのさ

本当に憎ったらしい人誑しだよ

白百合に囚われる

黒い髪、白い髪 黒い瞳、緑の瞳 傷だらけの体、玉のような肌 顰めっ面、微笑み 隙のない佇まい、いつでも殺せそうな儚さ 執事、主人 守る者、守られる者 ……あぁ二人は全く違う。 愛しい人、こんなに違うのにあなたは私を愛してくれる。手を差し伸べてくれる。 その美しい手で私を救ってくれ...